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最高裁判所第二小法廷 昭和24年(れ)860号 判決

主文

本件上告を棄する。

理由

辯護人津田騰三同橋田政雄の上告趣意について。

酒税法第一六條本文によれば「酒母、醪又ハ麹ヲ製造セントスル者ハ製造場一個所毎ニ政府ノ免許ヲ受クベシ」と規定し、また同法第六四條第一項本文及びその第一號によれば「左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ十萬圓以下ノ罰金ニ處ス」「一、第一六條ノ規定ニ違反シ免許ヲ受ケズシテ酒母、醪又ハ麹ヲ製造シタル者」と規定するところである。すなわち第一六條は本件の如く醪の製造行爲を爲さんとする者は、その事前において政府の免許を受けなければならない旨を規定し、次いで第六四號第一項第一號は右第一六條の違反者を處罰せんとするの法意であることは寔に明らかであると謂わねばならぬ。してみれば所論主張の右酒税法第六四條第一項第一號に「醪……ヲ製造シタル者」と規定してあるから、被告人の仕込んだ原料が未だ醗酵せず、從って醪として未完成のものである以上這は不罰行爲であるとの見解は到底採用し得ないのである。けだし、醪を生産しようとしてその原料を仕込んだ上、必要な撹拌行爲等をした以上醪製造行爲に該當するものと云わなくてはならないからである。しからば、原判決が判示第二の被告人の行爲に對し、判示法條を適用處斷したのは寔に正當であって、原判決には所論のような違法はなく、論旨は理由がない。

よって、刑訴施行第二條、舊刑訴第四四六條に從い、主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

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